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夜中の散歩

いじめについて考えている

最愛の子供・推薦文

最愛の子供

この作品は、世の異性愛規範や男性中心主義を批判し続け、多様性やセクシュアリティの自由をテーマとした小説を手がけてきた松浦理英子の新作小説である。

人間関係の中で器用に振る舞い他人から愛されるテクニックに長けているが、自分は他人への深い優しさを持ち合わせていないと感じている日夏。

理不尽な出来事に対し真っ向から怒りを表明するため、敵を作りやすく、自分の殻を厚くしがちな真汐。

暴力的な母親に執着されて生きてきたことで、極端に受動的な人格に育ってしまった、少女、空穂。

この3人の女子高生が、疑似家族を形成し、それぞれパパ、ママ、王子という役割を名付けあい演じながら関係を育んでいく。

主人公である3人の女の子たちがそれぞれ欠落や過剰を抱えており、3人で関係することによって初めて欠落も過剰も輝きとして機能するというような奇跡的なバランスを保っている。

その関係を崩す外部からの侵入者と、少女たち3人の心の変容が作用し、さらに受動的だった空穂が能動を手に入れたとき、疑似家族は崩壊し、3人の道は別々のものになってゆく。

松浦理英子らしい複雑な構成と他の作家は描かないような感情の奥底の描写や皮膚感覚の描写のリアリティに胸を揺さぶられた。

恋、性、友情などのどのレッテルもふさわしくない関係性について読みたい方にお勧め。